第11章 現代のプロテスタント教会、そして後書き

 

 プロテスタント教会の歴史をかなり独断的な視点で書いてきましたが、今日大きく分けて2つの流れになっています。

 一つは社会派または自由派(リベラル)と呼ばれるグループで会衆派、長老派、聖公会、ルーテルなどの伝統的教会で、メインライン・チャーチとも呼ばれます。伝道、回心者の獲得よりも、社会活動での証を重要視し、教派間の融合だけでなく、他宗教との対話も積極的に進めています。しかし教勢は停滞もしくは低下しており、また近年中絶の是非や同性愛者への対応を巡って紛糾しています。

 20世紀始め、メインラインの教会は、諸宗教、カトリック、正教会等との対話を進め、世界教会協議会(WCC)を設立し、エキュメニカル運動(教会一致運動)が推進され、各国に合同教会が誕生しました。日本では、政府の強制で、日本基督教団が設立されました。しかしこれを妥協と見る福音派や保守的な人々は離脱し、別の教派を作っています。それらの教会は主に世界福音連盟(WEF)【現在, 世界福音同盟(WEA)】を形成しています。日本でも戦後、多くの教派が日本基督教団から離脱しました。
 この分裂のもうひとつの大きな理由は、メインラインチャーチが自由主義神学に傾いているところにあります。それは聖書やキリスト教の教えを歴史的、批評的に研究する聖書批評学を受け入れるもので、リベラル派とも呼ばれます。
 聖書を神格化せず人間の文書として歴史的、学問的に分析、研究します。したがって聖書中の神秘的な記事、奇跡などは文字どおりに受け入れません。
リベラル派の中でも、聖書が神の言葉であることを信じつつ、聖書が書かれた当時の表現形式と現代人の思考法とのギャップを埋めることにより、現代人に神の真理を伝えようとしたり、聖書のメッセージを今日の科学や学問の批判に耐えうる客観的な真理として提示しようとする「良心的リベラル」と、聖書のメッセージそのものまでも否定して信仰を失う人々とに分かれるようです。


 一方福音派(エヴァンジェリカル)は伝道、教会形成を強調し、教勢を伸ばしています。多くは聖書主義に立ち、聖書はすべて神の霊感によると信じ、文字通り受け入れ、リベラル派の聖書批評学には否定的です。キリストの処女降誕、キリストの神性、奇跡、キリストの復活と再臨などを信じます。しかし近年は反知的傾向が薄まっており、また社会活動への関心も高くなっています。そのため、保守的、原理主義的(ファンダメンタリスト)グループとの分離、またペンテコステ、カリスマ派との分離など、福音派と言っても一枚岩では決してありません。(ですからこれで2つの流れというのはかなり無謀かもしれません。)

 リベラル派と福音派の溝は容易に埋められるようなものではありません。しかしカリスマ運動がこの両派に及んでおり、それを通じて交流が始まっていることは驚くべきことです。

 このように今日キリスト教会は様々に分かれていますが、筆者はそれぞれが相応な働きを神から託されていると考えるようになりました。ある人は天の国と反対の闇に向かって歩いている人に、向きを変えることを教え、天の国の鍵を渡し(伝道)、ある人は天の国に向かって歩く人々を正しく導き、励まし、力を与え(教会形成、聖霊)、またある人は、歩いていく途中の食事や宿を整備し、その道を弱い人でも歩けるように平らにする(社会活動)など。

 最後に、今日インターネットがこの大切な働きに大きく貢献し、このバーチャル教会(eChurch)も参加させて頂いてる光栄を感謝して、締めくくりたいと思います。

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 ここまで来るのに、その都度資料をあさり、インターネットで検索したりしながら、途中中断したこともあり、なんと3年掛かってしまいました。最後まで読んで下さってありがとうございます。当初は日本編も書くつもりでしたが、それはまた別の機会にして、一旦これで完了としたいと思います。(しかし訂正、追加は随時行うつもりです。)

ヒラデルヒヤにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。『聖なる者、まことなる者、ダビデのかぎを持つ者、開けばだれにも閉じられることがなく、閉じればだれにも開かれることのない者が、次のように言われる。
わたしは、あなたのわざを知っている。見よ、わたしは、あなたの前に、だれも閉じることのできない門を開いておいた。なぜなら、あなたには少ししか力がなかったにもかかわらず、わたしの言葉を守り、わたしの名を否まなかったからである。
(黙示録 3:7,8 口語訳)


神に栄光あれ。

2004年4月29日



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