第1章 「あなたに天の国の鍵を授けよう!」

わたしはあなたに天の国の鍵を授ける。あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。
あなたが地上で解くことは、天上でも解かれる。マタイ 16:19 (新共同訳)

1.1 ペテロと「天の国の鍵」

 イエスの名声が広まり、人々がこの人はいったいどうゆう人なのだろうかと噂し始めた頃、イエスはご自分の弟子たちに問いかけました。

「あなたがたは、私を誰だと思いますか?」  

イエスにとっては、噂だけでイエスを知る人々よりも、いつもご自分に従い、その目で彼の奇跡を見、その耳で彼の教えを聞いてきた、この弟子たちが、どう思っているのかが知りたかったのでしょうね。  
ペテロという、熱心で、直情型の弟子(だから時々失敗もする、愛すべき人物でした!)が、われさきにと答えました。

「あなたこそ、神の御子キリストです!」  

イエスはペテロに答えました。

「よく言った!ペテロ。このことは天の父なる神があなたに教えてくださったのだよ。」
「それでは今度は私があなたに言おう。あなたはペテロだ。私は、その岩の上に私の教会を建てよう。
わたしはあなたに天の国の鍵を授けよう。あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。
あなたが地上で解くことは、天上でも解かれる。」
(ペテロとは、正確にはギリシャ語でペトラス。石という意味があります。岩とはギリシャ語でペトラ。
こうゆう語呂合わせは聖書にたくさん出てきます。)

鍵を授かるペテロ

鍵を授かるペテロ

「へえ????」

っとペテロが言ったかどうかは分かりませんが、ペテロはこんな凄いことを言われて理解できたのでしょうか?
いったいイエスは何を言われたのでしょうか?
ペテロに与えられた「天の国の鍵」とは?????

イエスのこのなぞの言葉の意味は、このあとのペテロの生涯、そしてキリスト教の歴史の中で次第に明らかになるでしょう。

1.2 ペテロの大失敗

さて、ペテロはこのあと、大失敗を犯します。イエスを裏切ってしまうのです!イエスを裏切ったのはユダじゃないの? そう確かに逮捕のきっかけを作ったのはユダ。でも、その他の弟子たちも、イエスを見捨てて逃げてしまうのですから、おなじような者ですね。情けない。でもこれが私たち人間の本性なのですね。

そのペテロの大失敗とは、イエスが逮捕された夜のことです。 イエスは大祭司の家に連れていかれ、ユダヤ教の裁判にかけられることになりました。ペテロは心配で、連行されるイエスの後をそっとつけていきました。そして大祭司邸の庭に忍び込みました。そこにはその家に召使たちが焚き火で暖を取っていました。ペテロはその輪の中に知らん振りして紛れこみました。しかし、見破られてしまいました。

「あなたはイエスといっしょにいたのではありませんか?」

「いいえ。あの人なんか知りません。」

「あなたも仲間だろ」

「いいえ、違います。」

とりあえずなんとか難を逃れ、ほっとして裁判の様子を見守っていましたが、1時間位たつと

「やっぱり、あんたは仲間だ。ガリラヤ人だろ!」

「な、なにを言ってるのかわかりません!」

うろたえるペテロの目が、振り向いてペテロを見つめるイエスの目と合ったとき、彼は思い出したのです。イエスがペテロにこう言ったのを。

「あなたは今夜、3度、私を知らない、と言うだろう。」

そのときには、

「何をおっしゃる!私はあなたのためなら死んでもいいと思っているのに!」

と自信満々だったはずだったのに。 ペテロは表に飛び出し、激しく泣いたのでした。(詳しくはルカ22章をお読みください。)

しかし、ペテロはこのまま落ち込んでいたのではありませんでした。

1.3 初代教会の形成

パウロとペテロ復活したイエスは、もう一度ペテロを励まし、教会の指導者となることを命じました。 そしてイエスが天に昇り、ペンテコステの祭りの日、ついに聖霊(神の霊)が弟子たち全員に降りました。そのとき、ペテロが立ち上がり群集に向かって力強くイエスの福音と復活の証をしました。その結果、なんと三千人が信じて洗礼を受けました!(使徒2章) 「天の国の鍵」が開かれたのです! その後も、ユダヤ教からの迫害にも恐れることなく、ペテロをはじめとする弟子たちは大胆に宣教しました。そして異邦人(ユダヤ人以外)に初めて「天の国の鍵」を開いたのもペテロでした。(使徒10章)

しかし、その後は、キリスト教迫害者から劇的に回心して伝道者になったパウロが異邦人伝道のリーダーとなり、当時のローマ帝国の隅々まで福音を広める役目を果たしました。ペテロは主にユダヤ人への宣教者また、教会のリーダーとして活躍しました。 当時、ローマ帝国によって整備された道路網と、共通言語ギリシャ語によって、キリスト教はまたたくまに帝国中に広がりました。まさに神が備えられた時と人物によったのです。 パウロによって異邦人への「天の国の鍵」が開かれたと言ってもよいでしょう。 二人共、AD64年頃、皇帝ネロの迫害によってローマで処刑されたと伝えられています。 (上の絵は左がペテロ、右がパウロ。14世紀の作)


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