聖書と英語 Bible and English 

英語聖書の歴史

 英訳聖書の歴史をご紹介します。

 その前に、なぜたくさんの翻訳があるのか、その理由を考えて
 みましょう。

 1.ことばが変化している

   英語にしろ、日本語にしろ、ことばは時代とともに変化し
   ています。ジェームズ王欽定訳は、すばらしい英文として
   今も用いられていますが、現代人にとっては古い英語では
   理解できなくなっています。そのために現代英語に置き換
   える作業が進められています。

 2.聖書時代との文化的ギャップ

   聖書が書かれた時代、地域の文化的背景は、現代人には
   わかりにくいものです。それを克服しながら、聖書の、
   時代を越えた普遍的メッセージをどう現代人に伝えるか、
   その翻訳の方法により様々な試みがなされています。

 3.聖書原典研究の進展

   聖書の原典は失われていますので、その写本の断片を元に
   復元作業が行われていますが、新しい写本、資料の発見や
   研究成果を随時盛り込んでいます。

 4.時代の要請

   差別用語の撤廃、最近では性差別用語の撤廃のための改定
   が行われています。日本では「らい病」という言葉の変更
   が最近行われています。

△▲-------------------------------------------------------△▲

現在、英語訳聖書は、部分訳も含めると約70種類あると言われています。
ここではそのうち主なものを取り上げます。(プロテスタント向けのみ)


1384年頃 ウイクリフ訳聖書

     宗教改革の先駆者ウイクリフによる初めての英訳聖書。
     ラテン語聖書からの英訳。

1525-1535 ティンダル訳

     初のヘブル語、ギリシャ語原典から英訳。
     ティンダルは聖書を翻訳したかどで1536年異端判決を受け絞首刑に
     処せられた。
     この聖書は徹底的に廃棄された。

1539  大聖書 Grate Bible

     ラテン語聖書からの英訳
     クロムウエルが作らせ、すべての教会に置く事を義務付けた。

1560  ジュネーブ聖書

     メアリー女王の迫害を逃れてジュネーブに渡った学者たちによって翻訳。
     この聖書によってカルヴィニズムが英国に広く浸透した。
     長老派教会の指定聖書

1565  主教聖書 Bishop's Bible

     主教たちによる大聖書の改訂。英国教会公認聖書。

1611  ジェームズ王欽定訳 Authorized Version

     主教聖書を基にしつつ、原語から翻訳した。
     ジェームズ1世の命令により翻訳。華麗な文体、豊かな表現が特長で、また英
     語の美しさでは散文中の傑作といわれ、今でも標準的な聖書として用いられている。

1881-85 英国改定訳 English Revised Version(RV)

     1870年イギリス議会で改訂を承認 オックスフォード,ケンブリッジ両大学中心に作業を行う
    (ケンブリッジ大学のウエスコットとホート両教授の意見が重きをなした)
     原点に忠実な直訳。
     学問的正確さの点ではAVをはるかに凌ぐものであるが、翻訳として見た
     場合、むしろAVに劣るというのが一般的評価
    

1901  アメリカ標準訳 American Standard Version(ASV)

     RVに参加したアメリカ側の委員が、自分たちの要望を取り入れてもらえなか
     ったため、独自の翻訳をおこなった。

1946-52 改定標準訳 Revised Standard Version(RSV)

     最新の学問的成果を取り入れたRVの改定。AV以来の古語的表現を現代風に
     改める
     外典を含む。

1961-70 新英語聖書 New English Bible(NEB)

     イギリス超教派の学者による、最新の研究成果を取り入れた訳。外典を含む。
     できるだけ現代英語を用いることを目指した。

1966-76 現代英語聖書 Good News Bible, Todays English Bible(TEV)

     アメリカのプロテスタント、カトリックの共同訳。
     現代人に親しみやすい翻訳を目指した。伝統的な用語にとらわれず、大胆な
     意訳。

1971  New American Standard Version (NASV)
    後にNew American Standard Bible(NASB)

     原語に忠実であることを基本とする。聖書協会ではなくロックマン財団による。
     (このロックマン財団の援助により、日本では新改訳聖書が翻訳された。)

1974  新国際訳 New International Version(NIV)

     RSVなどの現代訳に満足しない保守的福音派の国際的プロジェクトによる翻訳。


1989  New Revised Standard Version(NRSV)

     RSVの改定。プロテスタント、カトリック、ギリシャ正教の共同訳。
     外典を含む。

1989  Revised English Bible

     NEBの改版

1995  Contemporary English Version(CEV)

     原典に忠実で、かつ現代人が聞いて理解できる翻訳を目指した。

2001  英語標準訳(ESV)

     RSVの修正版。最低限ながら性的に中立な用語を採用している。

2004  Today's New International Version (TNIV)

     性関係用語をより中立的なものにするなどの改訂.
    「サンズ・オブ・ゴッド」が「チルドレン・オブ・ゴッド」など。

主な英語聖書の図解(PDF)