聖書とIT


- パソコン、ネットで読める聖書 -

天は神の栄光を物語り/大空は御手の業を示す。
昼は昼に語り伝え/夜は夜に知識を送る。
話すことも、語ることもなく/声は聞こえなくても
その響きは全地に/その言葉は世界の果てに向かう。
               (詩篇19編2-5節・新共同訳)

聖書とコンピュータの意外な出会い

 聖書の研究にコンピュータが使われ始めたのは、1970頃で、そのころは大型コンピュータでヘブライ語の研究などが行われていました。1980年代にパソコンが普及しはじめると、電子化された聖書を使っての研究が大学の神学部などで始まりました。日本では同志社大学の野本先生などが、日本語聖書、ギリシャ語、ヘブライ語聖書のデータベース化を始めていました。

 ところで聖書には万国共通の章番号と節番号付けられていますが、これは16世紀に初めて付けられたものだそうです。今私たちは、そのおかげで、「xx書のxx章xx節には、」と言われればすぐに自分でその箇所を開くことができます。 コンコルダンス(ある言葉が聖書のどこに出ているかがわかる語句索引)やクロスリファレンス(おのおのの節に関連する箇所の索引。引照付き聖書などにある)なども、この章節番号のおかげでできています。すでにお気づきと思いますが、これは今日のデータベースや、ハイパーテキスト、キーワード検索など、コンピュータでおなじみの機能の原型であることがわかります。このように聖書研究の世界では、コンピュータ活用に適した素材がすでに準備されていたのです。詳しくは野本先生の論文をご覧下さい。

野本 真也(同志社大学神学部教授) 「聖書とコンピュータ」(リンク切れ)

聖書研究ソフト

 欧米では、MacBibleBibleWorksなどのソフトが実用化され、英語版聖書での聖書研究に大きく貢献していました。なにしろ今までは聖書や辞書、注解書などたくさんの書物を机いっぱいに広げて行われていたものが、パソコンひとつで行えるようになり、しかも研究スピードが飛躍的に向上したのです。(もちろん聖書研究の根幹は霊的な事柄であり、パソコンですべてできる訳ではありませんが、煩雑な作業が効率化され霊的な思索により多くの時間を割けるようになったはずです。)

 これに刺激されて、日本コンピュータ聖書研究会が発足し、能城・堀川・本田師らにより、日本語聖書で初の実用的ソフト・J-ばいぶるが1995年12月に発売されました。当初は3つの日本語聖書と2つの英語聖書のみでしたが、今日ではギリシャ語、ヘブル語聖書や辞書なども備えたバージョンも発売されています。その後、別のソフトがいくつか発売されていますが、J-バイブルシリーズを超えるものは、今のところ日本では出ていません。その理由のひとつには聖書の著作権問題があります。英語圏では、たくさんの英語聖書や注解書が存在し、古いものは著作権の消滅したものがあります。これらを用いて多くの安価なソフトが開発、提供されています。代表的なものでは、ONLINE BIBLEというものがありますが、ネットでプログラム本体と多くの聖書データや注解書などがダウンロードできます。ヘブル語、ギリシャ語聖書、辞書も自由に使え、筆者も愛用しています。著作権のある聖書については、有料で販売していますが、無料分だけでも十分実用になります。しかし日本語の聖書では、口語訳、新改訳、新共同訳すべてに著作権があり、自由な開発を阻んでいます。

(追記:その後、口語訳聖書の著作権が切れて、現在、フリーのソフトが出回っています。e-Swordでも口語訳がダウンロードできますし、iPhoneアプリでも、いくつか出ています。)

 そんな訳で、筆者はネット上で無料のものを提供したいと思い、著作権団体と交渉してeBibleを開設しました。ほんとは安価なソフトを開発したいのですが、プログラミング能力が無いので、ネットでの検索に留まっています。前述のONLINE BIBLEで、日本語聖書を載せようという計画もあったようで、日本コンピュータ聖書研究会のメンバーのひとりが日本側の窓口になっていましたが、いまだに実現していません。

フリーの聖書と聖書ソフト

 このような日本の聖書ソフトの状況と比べて米国はすごいですね。なんと聖書ソフト開発のためのクロスプラットフォーム・オープンソース・ツールを提供するSWORD Projectというのがあります。50以上の言語、200以上のテキストのコレクションを所有し、Windows,Linuxなど様々なプラットファームで、誰でも自由に聖書ソフトが開発できるようにツールを提供しています。
(日本に数多くいるはずの優秀なプログラマーの方で、クリスチャンの方、誰かこのようなプロジェクトに参加して、安い日本語ソフトを開発してくれませんか?)

後述のBible Converterで、SWORD用の聖書データに変換できますので、筆者は日本語聖書(口語、新改訳、新共同訳)を変換して個人的に使用しています。(下図)

e-Swordというソフトも機能が充実していますし、今は口語訳聖書もダウンロードできるようです。いずれ詳しくレポートしたいと思います。

 一方でパブリック・ドメインの新しい聖書も出現しています。フリーの聖書を使う際の難点は言葉が古いことと、翻訳が古いことです。World English Bible(WEB)は、American Standard Version (1901)をベースしていますが、古い英語をコンピュータを使って新しい英語に置き換えることから始め、ヘブライ語、ギリシャ語原典をも参照しながら、近代英語の新しい聖書翻訳で、しかもIT化に適した様々な形式でダウンロードできます。現在、新約、詩篇と箴言が完成し、旧約もだいぶ出来上がってきています。
 更にこのWorld English Bible(WEB)をもとに、既存の日本語聖書も参照しながら、日本語のパブリック・ドメイン版聖書、 電網聖書も翻訳が進められています。
 欧米では、聖書の販売権を独占することでかなりの利益が得られるので、それに対する批判があるようで、World English Bibleのような動きがあるのでしょう。しかし日本では、まだまだ聖書関係はビジネスとしては成り立たないどころか、多くは献金に支えられているのが現実であり、日本聖書協会や関連の出版社を困らせていけないとは思うのですが、IT化の時代にはこのような活動も大いに結構だと思います。

iPhoneの出現

iPhoneの出現は、聖書ソフトにも革命をもたらしました。iPhoneアプリ配信初期からたくさんの聖書アプリがダウンロード可能となっています。

特にYouVersionというアプリは最も素晴らしく、最新の英語訳NIVや、新共同訳聖書が無料で読めます。

詳しくは、iPhoneで聖書を読もうをご覧下さい。

日本語聖書発行元